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チェコに「クルコノシュ」という東欧最大の国立公園があります。 そこの針葉樹林が、突如として将棋倒しのように全滅してしまったのです。
何とか再生しようと努力したものの、土も酸性化して変質してしまって、植林しても木が育たないのです。 その原因は酸性霧と言われています。
酸性雨の影響。 昔からある酸性雨の被害実は、SOxやNOxによる被害は17世紀からすでに報告されています。
イギリスでは、1661年に作家のJ・Iが「石炭から出る地獄のような陰気な煙がロンドンを覆っている」と書いています。 また1772年に博物学者のG・Wが「庭の果物も実らず、子どもの半数は2才以下で死んでいる」と述べています。
そして、1952年に「ロンドンスモッグ事件」が発生しました。 12月5日からたったの4日あまりの間に、4000人もの死者を出してしまったのです。
このときの酸性雨のpHは1.5で、レモンよりも酸っぱく強烈なものでした。 報告書によると、通常に比べて気管支炎による死亡は8倍に、肺炎による死亡は3倍に、他の呼吸器の病気によるものが5倍増えたそうです。
さらに「その後の2カ月間に8000人が死亡した」と報告されています。 このほか、ベルギーで63人の死者を出した1930年のミューズ渓谷事件、20人が死亡した1948年のアメリカで起きたドノラ事件などが非常に有名です。
どちらも、近くの精錬所や硫酸工場から排出される硫黄酸化物が原因と言われています。 日本でも19世紀末に、硫黄酸化物を含む酸性雨や酸性霧のために、足尾鉱山周辺で森林の立ち枯れが起こっています。
1960年代には、四日市、川崎、尼崎、北九州などで大気汚染によるぜん息や気管支炎の被害が続出したことは有名です。 さらに1974年7月3日には北関東一円に降った霧雨で、3万人以上の人が目や皮層の刺激を訴えました。

この被害をきっかけに、日本でも酸性雨がクローズアップされ、環境庁が関東地方で酸性雨の観測を始めたのです。 酸性雨の具体的影響樹木の衰退酸性雨の影響の第一は、「樹木の衰退」です。
特に、広葉樹よりも針葉樹に大きな被害が出ています。 裸子植物である針葉樹は、樹冠部や種子が酸性雨や酸性霧に直接さらされるために傷つきやすいのです。
外から見ると正常な森林が、実は酸性雨や酸性霧によって弱っていて、寒波や高温、雨不足などをきっかけに、突然、樹木が広い範囲で立ち枯れしたり倒れたりしてしまうことがあります。 この前兆として、キクイムシ(マツクイムシ)の被害が見られることがあります。
しかし、「酸性雨によって抵抗力が低下している」という本当の原因を無視して殺虫剤をまくと、よけいに木をダメにしてしまうことになります。 土壌の酸性化酸性雨が降り続くと土壌が次第に酸性化して、土の中のアルミニウムが溶け出してきます。
この状態のアルミニウムは有毒物質として働き、土壌中の微生物を死滅させます。 また、樹木の養分であるカルシウムを奪って、枯死させてしまいます。
さらにクロロフィル(葉緑素)をつくるのに必要なマグネシウムを奪うことで、光合成を妨害してしまうのです。 湖沼水の酸性化酸性雨は湖や沼の水を酸性にして、水生生物に重大な影響を与えます。
湖水そのものが酸性化することによる直接の影響もありますが、酸性化によって水底の土壌からアルミニウム、銅、カドミウム、鉛などの有害金属が溶け出し、水生生物が中毒死してしまうことが多いのです。 そして一般に、酸性雨によって生物が死滅した湖沼は、溶け出したアルミニウムが汚れたものを集めて沈める「凝集沈殿作用」があるために透明度が高くなります。
見事なほど透明な湖になりますが、生物の存在しない「死の湖」なのです。 また、酸性雨に含まれる窒素酸化物が湖や沼、内海などの停滞性水域に蓄積して、富栄養化による赤潮の原因にもなっています。
人体への影響酸性霧による気管支瑞息や肺炎はもちろんですが、不治の老人性痴呆症と言われるアルツハイマー病は、「酸性雨によって溶け出たアルミニウムが脳に蓄積されることが原因ではないか」と言われています。 まだ確定しているわけではありませんが、用心しておくに越したことはありません。
1960年に、北欧で髪が緑になるという事件が多発したことがあります。 調査の結果、酸性雨によって井戸水や水道水が酸性化したためということが判明しました。

水道管に使われていた銅が酸性化した水に溶け出し、その水を飲んだり洗髪に使ったために、髪が緑色に染まってしまったのです。 建造物や文化財への影響一般に建造物や文化財は、酸に侵されやすい金属やカルシウムでできています。
これらが酸性雨にさらされることにより、大理石が石コウ化したり、雪国の「つらら」のような「酸性雨つらら」ができたりするのです。 このほかにも、「上野公園の西郷さんの像が変色してしまった」「4600年前に建造されたスフインクスがこの30年でボロボロになった」「ロダンの考える人がとけて涙を流しているように見える」など、さまざまな被害が世界中から報告されています。
また、鉄道のレールが錆び付いたり、橋げたのコンクリートの一部が崩れているのをよく見かけるようになりました。 早急に点検し、大事故が起こらないうちに修復しておかなければなりません。
酸性雨の原因石炭や石油を燃やすと、硫黄酸化物が発生します。 また車を運転すると、窒素酸化物が排出されます。
これらが酸性雨の原因になっていることは明らかです。 しかし、これは大気汚染すなわち「公害問題」の原因にほかなりません。
ここで問題にしているのは、酸性雨という「地球環境問題」のはずです。 では、「公害問題」と「地球環境問題」はどのように違うのでしょうか?簡単に言えば、「公害問題」は、四日市とか尼崎とか水俣とか狭い範囲、つまり局地的な問題で、「地球環境問題」は国境を越えた地球規模の問題です。
かつてイギリスは大変深刻な大気汚染に苦しんでいました。 このときの大気汚染は、局地的な「公害問題」でした。

その原因は、煙突が低かったので煙が工場の周辺にたちこめるためでした。 煙突を高くすると、上空の風に乗って煙が遠くまで運ばれるため、周辺の「公害問題」を防ぐことができます。
そこでイギリス政府は、1956年に「大気浄化法」をつくり、高層煙突の建設を推進したのです。 ところが、煙突の高層化が新たな問題を引き起こしました。
汚染物質が気流に乗ってより遠くに運ばれ、北欧のスカンジナビア半島で「酸性雨」となって降り注いだのです。 つまり、被害が国境を越えてしまったのです。
このとき、局地的な「公害問題」がボーダレスの「地球環境問題」へと変貌を遂げたのです。 その後、東欧諸国、ドイツ、フランスなどからも汚染物質が気流に乗って風下に運ばれ、スカンジナビア半島に集中していることが分かりました。
ノルウェーなどスカンジナビア諸国の酸性雨は、ほかの国からの汚染物質が大きな原因となっていたのです。 北アメリカでも、風向きの違いによって、アメリカで排出されたSOxがカナダで、またカナダのSOxがアメリカで酸性雨となって降り、両国間で責任を押しつけ合うという問題がありました。
また、「中国で排出された汚染物質が酸性雨となって日本に降っている」という報告も出されています。


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